スポーツと恋愛(プロローグ~特訓開始)
恋愛ってもしかしたら自分から動かないと見つけられないかもしれない。
本当に大切な人は、すぐ近くにいたりするなんて誰かが言っていたけど、そんな運命の人みたいなのあるだろうか?
やはり自分から動いて見つけないと・・・見つけないと・・・
——季節は秋
通学の為長い坂道を一人の女生徒がクタクタになりながら歩いていた。
「はぁはぁ。」
かなり息を切らして歩いているのは夢野 陽菜(ゆめの ひな)。
この長い坂の上にある都立家政学園(とりつかせいがくえん)の2年生。
この夢野 陽菜、成績は中の中っとまぁまぁの成績。
だが、運動神経は0に限りなく近いほどに無い。
「あ~、この坂がなければ、全然いい学校なのに・・・」
陽菜は途中で息を整えながら呟いた。
何故陽菜がこんなにもつらい思いをして通学しているのか、それは・・・
「この制服はめちゃくちゃ可愛いのに、この坂が最大の問題点だぁ~」
そう、陽菜が都立家政学園に入学した理由は制服の【可愛さ】だけの理由だった。
「なーに朝から、へばってんのよ陽菜。」
陽菜の後ろから、声をかけてきたのは、幼稚園からの幼馴染で大親友の 早坂 夏凛(はやさか かりん)運動神経0の陽菜とは違い、学園中女子でトップクラスを誇るほどの運動神経を持っている典型的な運動系女子だ。ただ、学力は下から数えた方が早いくらい苦手だ。バレー部所属。
「あ、夏凛。珍しいね。いつも遅刻ギリギリなのに。」
息を整え歩き始めようと陽菜は歩を進めながら夏凛に言った。
「なんかさぁ、昨日の放課後、西野先生に今度ある、球技大会の実行委員頼まれてさぁ。家のお店と部活のことで手一杯って言ったんだけどさぁ。どうしてもって言われてさ。」
夏凛の家は近所で、かなり有名は和食店であり、人気はかなりのもの。
「何かでも頼み事されるのは、信頼されてる証拠だよ。私なんて何も頼まれないし。そもそも球技大会の実行委員会なんて。てか、球技大会もうすぐなんだ。」
夏凛との話で陽菜のテンションはさらに下がった。
「出ました、陽菜の体育関係でのローテーション。」
「ロウテンションね・・・」
そうそう、っと夏凛はそう付け足し黙った。
「そもそも、なんで球技大会なんて行事があるのよ。」
「仕方ないと思うよ。毎年うちの学校の運動部の80%は甲子園とかインターハイ、玉竜旗とか出場してるからね。学校の行事でも体育関係に力を入れたいんじゃない?それに、もし、うまく、バスケに立候補すれば、あいつのかっこいい姿が見れんじゃない?」
夏凛が言う「あいつ」とは陽菜がひそかに思いを寄せている、同じクラスメイトの男子生徒の雫神 雪都(しずくがみ ゆきと)。
成績上位、運動神経抜群のやめてしまったが元バスケ部のエースという陽菜の中では白馬の王子様。
「それだけが唯一の救いだよぉ~」
そんなことを話しながら、陽菜と夏凛は、長い坂道を登っていく。
「はーい。んじゃテキトーに球技大会の競技を発表しまーす。」
球技大会の実行委員の夏凛が、教団に立ちゆるーく話し始め、黒板に競技を書き始めた。
ソフトボール、バレーボール、テニス、サッカー、バスケット。
この五項目が今回の競技らしい。
「じゃあアンケート用紙に自分が出たい競技書いてねー。んじゃあ、西野先生、用紙配ってー」
「お、俺が?用紙お前が持ってるだろ?」
完全に夏凛に任せていた西野が面食らった。
「あ、そうだった・・・じゃあ。はい。よろしくー」
夏凛は持っている用紙を西野に渡して自分の席に戻った。
「・・・結局俺かよ・・・」
っとぶつぶつ言いながら西野は用紙を配り始めた。
「(私は、別に出なくても良いんだけどなぁ)」
・ソフトボール・・・足が遅いからすぐアウトになるしそもそもボールがバットに当たらない却下。
・バレー・・・ジャンプが低い、背も高くない、サーブからボールが取れても90%の確率で自分の顔に直撃するため却下。
・テニス・・・ボールを追いかけるので精一杯で点が取れない却下。
・サッカー・・・ルールも良く分からないし、ボールを渡されても、足に当てて蹴ろうとしても、なぜかボールに当たらずこけるので却下。
・バスケ・・・ドリブルすると、足で蹴ってしまうし、ボールを投げてもゴールに届かないし却下。
「(どれも、足手まといになるなぁ)」
っと自分の運動神経の無さに沈みながらも、自然とバスケに丸を付ける陽菜。
一通り立候補が集まり、後に教師が競技のバランスをとるため、調節をしてから、最終決定出すという流れだ。っと言っても全体的に女子生徒が少ない家政学園にでは女子生徒の競技移動はほとんどない。なので用紙に丸を付けた時点でほぼ決定。
「ひーな。」
帰りの用意をしていると一足先に支度を終えた夏凛が声をかけた。
「あ、夏凛。今日も部活?」
「うん。まぁ、土日出ない分平日はしっかり出ないとね。スタメン落とされちゃうし。」
夏凛は長身を生かしたミドルブロッカー。部活内でもかなり重宝されている。
「陽菜は結局、何に入れたの?」
「え?まぁ、ここではちょっと・・・」
陽菜はちらっと談笑している男子生徒の中の雪都を見る・・・っと視線に気付いたのか、こちらを振り向き目が合う。
「(あ・・・)」
陽菜は、そのまま動けなくなる。雪都は陽菜の目線に気が付くと穏やかな笑顔を送った。そのあと視線を男子生徒の談笑に加わった。
「あぁ、陽菜やっぱバスケに立候補したんだ?」
「ちっ、ちょっと・・・」
陽菜は慌てて立つと夏凛の背中を押して教室から出た。
「・・・」
その光景を、ちらっと雪都は見ていた。
「夢野、バスケに立候補したんだな。ちょっと優勝は難しそうだな。」
男子生徒がボソッと話した。
「夢野ってそんなに運動神経鈍いのか?」
雪都が聞く。
「お前、知らなかったのか?結構学年の中では有名だぞ?ほとんど運動神経が0に等しいって。まぁ、早坂っとつるんでるから、余計に目立つってのもあるけどな。」
「ふーん。」
——近所の公園
陽菜の公園の端の方にバスケットコートがある。
そこに私服の陽菜が公園でレンタルしたバスケットボールを持って立っていた。
「・・・っ」
無言でボールを投げる。ボールは無常にもゴールの下に当たり陽菜のもとに戻ってきたが、陽菜はボールを取ることなく、ボールは陽菜の足元を素通りしていった。
「・・・やっぱり、私には無理なのかな。」
陽菜がうつむいていると、陽菜の後ろから通り過ぎたボールが上空を通り過ぎ、見事ゴールリングに入った。
「え?」
陽菜が、驚いて振り返ると・・・
「3ポイントシュートゴール!!」
雪都がスリーポイントフィールドから、ボールを投げていた。
「雪都君?なんで?」
「バスケの基本、教えようかと思ってさ。」
雪都は戻ってきたボールを拾い上げて陽菜に渡した。
「でも私、ドリブルも上手に出来ないし。」
「今はまだね。でもうまくなれば、バスケも楽しくなるし,楽しくなればバスケの腕も上達するでしょ?」
「なるかな?」
「なるさ。じゃあ。早速始めようか。」
こうして、陽菜と雪都の秘密の特訓が始まった。